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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)7768号 判決

原告 内藤建物株式会社

右代表者代表取締役 内藤宏

〈ほか一〇名〉

以上原告ら訴訟代理人弁護士 山口進太郎

同 平田政蔵

被告 東京都

右代表者知事 美濃部亮吉

右指定代理人 島田信次

〈ほか二名〉

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原告らの請求の趣旨)

一  被告は、

(一) 原告内藤建物株式会社に対し金一〇万六〇四九円

(二) 原告丸目梅に対し金二三万四一八九円

(三) 原告内藤儀彦に対し金一万一三二八円

(四) 原告東京中央薬品株式会社に対し金七六万二〇六六円

(五) 原告山田倉平に対し金三三万円

(六) 原告有限会社クサカ商店に対し金二〇万一四二二円

(七) 原告日下卯之助に対し金三三万円

(八) 原告池野浩に対し金一万二〇〇〇円

(九) 原告本田義男に対し金二五〇万円

(十) 原告本田糸恵に対し金三五万〇一六三円

(十一) 原告本田直子に対し金二万〇二六〇円

(十二) 原告本田安枝に対し金二万〇二六〇円

およびこれらに対する昭和三八年九月二〇日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決および仮執行の宣言。

(請求の趣旨に対する被告の答弁)

主文同旨の判決。

≪以下事実省略≫

理由

一  東京都知事が、中小企業等協同組合法第一一一条第一項第二号、協同組合による金融事業に関する法律第六条、第七条、銀行法第二〇条ないし第二三条にもとづき、訴外組合に対し監督権、検査権および業務停止命令等の処分権を有していること、訴外組合が昭和二七年三月七日中小企業等協同組合法に準拠して宏和信用組合の名称で設立された信用組合であり、昭和三〇年一月理事長に伴道義が就任すると同時に名称を東京昼夜信用組合と改め、その業務を営んできたものであること、そして、訴外組合はその運営が放漫であったため莫大な欠損金を出すに至り、昭和三八年一月三〇日東京都知事から協同組合による金融事業に関する法律第六条により準用される銀行法第二二条にもとづき業務停止命令をうけ、同日その業務を停止したものであることは、いずれも当事者間に争いがない。

二  原告らは、別紙目録記載のとおり訴外組合に対し預金債権を有するものであるが、訴外組合に対する監督行政庁である東京都知事は、その監査結果で判明していた訴外組合の経常的な業績不良および昭和三四年七月二七日判明した訴外組合の株式会社鬼怒川温泉ゴルフ倶楽部に対する巨額の違法貸付等の事実にかんがみ、遅くとも右昭和三四年七月二七日の時点において、協同組合による金融事業に関する法律第六条で準用される銀行法第二二条および第二三条により、訴外組合に対し、新規預金者の保護を期するため業務停止命令の一形態である預金の受入停止の措置をとるべきであったのに、これをしなかったから、原告らに対し不作為による不法行為責任を負うべきであると主張する。

まず、協同組合による金融事業に関する法律第六条で準用する銀行法第二二条によると、監督行政庁は、信用組合の業務または財産の状況により必要と認めるときは、業務の停止、財産の供託を命じ、その他必要な命令をなすことができるものとされている。この規定は、信用組合の業務または財産の状態が悪化し、その経済的破綻が予想される場合に、監督行政庁が業務停止等の命令をなすことによって、あらたに当該信用組合と預金等の取引をしようとする者や既存の預金者その他の債権者および組合員らの被るべき損害を防止し、またはその損害を最小限度にくいとめ、それらの者の利益を保護することを目的とするものである。しかし、信用組合等の金融機関にあっては特にその信用が重視されるので、右の業務停止等の命令がその組合に及ぼす影響は重大であって、立ち直りの途がまだ残されている組合が右の命令を受けたために決定的な破綻に立ち至るという危険も考えられ、右命令の発動については、あらたに預金等の取引をしようとする者の利益と既存の預金者等の利益とが相反する面のあることも否定しえないところである。また、信用組合は本来自治的協同組織により自己の責任において金融業務を行なう私企業であって、その経営に対する監督行政庁の介入は、公益保護のための必要最小限に止められるべきものである。したがって、監督行政庁が前記法条により業務停止等の命令を発すべきか否か、いかなる命令を発すべきかを決定するについては、その信用組合の業務および財産の状況を総合的に調査探究するとともに、他の行政指導等の手段により経営を立ち直らせることができないかどうかを広く検討し、前記法条の趣旨に照らしてその命令を発することの利害得失を充分に比較考量したうえで、高度の経済政策的見地から慎重にその決定をなすべきである。それらの点から考えると、前記法条による業務停止命令等の権限の行使は原則として当該行政庁の自由裁量に委ねられているものと解すべきである。

つぎに、協同組合による金融事業に関する法律第六条で準用する銀行法第二三条によると、監督行政庁は、信用組合に法令違反等の行為があった場合には、業務停止命令等の処分をなすことができるものとされている。これについても、信用組合に法令違反等の行為があったからといって直ちに業務停止命令等の処分がなされなければならないものではなく、前示と同様に、それらの処分の重大な影響力等の点にかんがみ、処分をなすべきか否か、いかなる処分をなすべきかの決定は、その利害得失等を総合的に検討したうえで、高度の政策的見地から慎重になされるべきものであり、したがって、右法条による処分権限の行使も原則として当該行政庁の自由裁量に委ねられているものと解するのが相当である。

以上のとおりであるから、監督行政庁が前記各法条による権限を行使しなかったことが結果的にみて妥当でなかったとしても、原則的には、行政上の責任を問われることはあっても、違法の問題を生ずることはないというべきである。しかし、もとより自由裁量とはいってもそれは行政庁の合理的判断にもとづく裁量を期待してのことであるから、右の権限の不行使が協同組合による金融事業に関する法律が目的とする預金者等の保護の見地から著しく合理性を欠くものと認められる場合においては、その不作為は違法とされ、国家賠償法第一条に定める賠償責任の原因となるものといわなければならない。

三  そこで、本件の場合、東京都知事が故意・過失により、右のような合理的な裁量にもとづかずして、訴外組合に対し原告ら主張の時点まで同主張にかかる処分を行なわず、これを遷延させていたものであるかどうかについて検討する。

≪証拠省略≫を総合すると、東京都知事が、昭和二九年二月二七日以降昭和三八年一月三〇日業務停止命令を発するまでの間、訴外組合に対して行なってきた業務監査結果およびその結果にもとづく同組合に対し行なってきた行政指導の内容は、概略次のようなものであったことが認められる。

(一)  東京都知事は訴外組合がその前身である宏和信用組合の名称で業務を営んでいた昭和二九年二月二七日を基準日とする監査結果にもとづき次のようにその問題点を指摘するとともに、業務運営方法等について改善を求めた。

1  訴外組合は、前期繰越損金として五一四万一六四八円を計上し、同会計年度の欠損金として七〇〇万円程度が予想されるうえ、貸付金の中には二〇〇〇万円近い不良債権が存するところから、欠損金総額は約三二〇〇万円にも達し、同組合の財政は危険状態に立至っていることが明らかにされたため、放漫な経営態度が注意されるとともに、不良貸付金の点については貸付先の信用調査の不徹底と回収方法の無策さがその原因であるとして指摘され、その回収対策について同組合の回答が求められた。

2  訴外組合では取引業務は必ず帳簿を通して行なうことという正規の簿記の会計原則を怠っていたことが判明したので、右原則を遵守するよう指示された。

3  訴外組合では商工組合中央金庫からの借入金の担保として、融通手形を差入れていることが判明したため、これを廃止するよう指令された。

4  訴外組合の銀行に対する預金残高と銀行の預り金残高とが一致していないことが判明したため、右不符合の原因の調査が命ぜられるとともに、その結果の報告が同組合に対し求められた。

5  訴外組合の仮払金の経理の杜撰さが指摘され、その改善が求められた。

6  そして、右監査結果にもとづき、訴外組合の財政状況悪化の原因として、前記1のような欠損金の存在の他、同組合の短期借入金による資金繰りが指摘され、その改善策として外部からの安定資金の導入等の資金計画、放漫な支出の防止などについて行政指導が行なわれた。

(二)  右監査後、訴外組合(ただし、当時の名称は宏和信用組合)の経営状況は更に悪化し、昭和二九年夏頃には預金の払戻しも不能となる寸前にまで立至った。そこで、東京都知事および東京都経済局通商振興部金融課は、同組合の役員の更迭を行ない、当時信用組合設立の計画を持ちその認可の働きかけを行なっていた伴道義を右宏和信用組合の理事長に推薦し、同人に右組合を引き継がせるとともに、同人から資金を導入してもらい、右組合の危機を回避しようとした。そして昭和三〇年一月右組合の理事長に伴道義が就任するとともに、名称が東京昼夜信用組合と改められるに至った(ただし、この点は当事者間に争いがない。)。

そして伴道義が訴外組合の理事長に就任した最初の監査結果(昭和三〇年七月一日を基準日とする。)では、伴道義が宏和信用組合を引き継いだ昭和三〇年一月頃には予想欠損金が六〇〇〇万円を上回っていたところ、新理事長となった伴道義は一三〇〇万円の資金を導入するなどして、旧預金者との間に預金額に応じ一定の割合の金額を払戻す等の調停を成立させたりして訴外組合の再建計画を進めていること、訴外組合の新預金は順調に伸長し、その運用も順調であることが明らかにされた一方、右基準日現在の日計表では前期繰越金として二四二四万五六三四円が計上されるなどなお警戒を要するとして、東京都知事は訴外組合に対し、(1)旧債権債務の適正な取扱いについて指示し、特に旧貸付金のうち回収したものについて所定の様式による報告を、(2)新理事の組合出資金の増額を、(3)営業所の電話および増築不動産の帳簿記入を要求するなどの行政指導を行なった。

(三)  昭和三一年一〇月一七日を基準日とする監査結果にもとづき、東京都知事は訴外組合に対し次のとおり改善等を指示し、その回答を求めた。

1  右基準日における欠損金として、繰越欠損金三一三三万五三三七円、同期仮決算損失金六二八万七〇〇〇円、分類資産欠損見込額七二〇一万四〇四三円の合計一億〇九六三万六三八〇円が見込まれ、これが組合資産の四六%に当り、自己資本二五一〇万六四〇〇円の約四・四倍に相当するところから、自己資本の充実を図るように指示がなされた。

2  理事長伴道義が代表取締役をしていた株式会社日光と訴外組合との経理区分が不明確であったため、これを改善するように指示がなされた。

3  訴外組合では組合員外の貯金、貸付金および地域外組合員等定款違反行為が非常に多く認められたので、定款の規定を厳重に遵守するよう指示された。

4  訴外組合の資産は多額の固定化および不良資産を有していることが明らかとされたので、その流動化を図るように指示がなされた。

5  訴外組合の資金調達源である釣銭貯金のコストが計画より高いことが判明したため、その引き下げおよび地域外における右貯金の取扱いの停止などが指示された。

6  その他貸出金の事務処理、旧勘定帳簿の処理についての改善、訴外組合の再建整備計画の樹立、実行、同組合の機構の改善などが指示された。

更に、右監査結果によれば、訴外組合は経営規模も大きく損害も極めて多額で、経営の不健全が明らかになったため、都知事は、行政命令等により内部機構の整備充実、運営方針の改革適正化を図り、訴外組合の再建を行なう必要があると認め、昭和三一年一二月一二日訴外組合を、「信用組合の経営が正常でないものを対象とし、その運営の適正、経理の健全化、一般信用の保持等を目的として昭和三〇年七月四日制定した信用組合指導要綱」にもとづく特別指導組合に指定し、訴外組合の監視を強化しその再建を図る行政指導方針をとるに至った。

(四)  昭和三二年八月八日を基準日とする監査結果では、

1  欠損金は一億七〇〇〇万円見込まれ、これを補填する組合出資金は二八一三万円であるから一億四〇〇〇万円の損失超過となり、また組合の所有する純資産は約四〇〇〇万円であり、組合が組合員から負っている債務の合計は約一億七四〇〇万円であるから資産を即時換金して債務の支払いにあてたとしても約一億三四〇〇万円の債務超過となること

2  貸付金のうち約五七〇〇万円は架空名義の約束手形や商業手形を装った融通手形によって組合長伴道義に貸出されており、その貸付にあたっては貯金担保が付されているが担保の貯金額が少なく信用貸の方が大きいことなどの事実が判明した。

3  これに対して、東京都知事は、従前の繰越欠損金額の中には宏和信用組合当時のものも相当含まれているため、これを除外した新勘定のもとで、右伴道義に対する貸付金の回収および貸出業務の適正化が図られるならば、訴外組合の再建、業務の存続は可能であるとの見通しを建て、次のような指示を行なった。

すなわち、伴道義に対する五七〇〇万円の貸付金については、その返済を確保するため、同人に右返済方と担保提供を誓約させ、昭和三二年一〇月七日には訴外伴チサの所有にかかる

東京都文京区駒込千駄木町二五一番

一  宅地 一三〇坪

同所   二八八番の三

一  宅地 八九坪五合八勺

同所   二八九番の三

一  宅地 二八坪八合八勺

同所   二九〇番の一

一  宅地 一六坪七合

同所   二九一番の一

一  宅地 一五坪五合三勺

東京都文京区駒込千駄木町二八九番地三

家屋番号 同町東七七〇番の三

一  木造瓦葺モルタル塗二階建居宅一棟

建坪 一二坪

二階  八坪

同所   二九一番地一

家屋番号 同町東七七八番

一  石造一部木造瓦葺平家建倉庫兼事務所

建坪 一二坪二合五勺

の不動産(当時の評価額合計一七九八万六七八〇円)について訴外組合のため債権極度額五七〇〇万円とする根抵当権設定登記手続を行なわせ、更に、訴外組合が株式会社日光(代表取締役伴道義)から借りて本店営業所の土地、建物として使用していた東京都中央区京橋二丁目四番地六、宅地三二坪一合七勺および同地上の家屋番号同町四番の二九、木造鉄板葺二階建店舗兼居宅一棟、建坪二九坪二合八勺、二階二七坪四合五勺を同年一〇月二日右伴道義の債務の担保のため訴外組合へ所有権移転登記手続を行なわせた。また、東京都知事は、貸付業務の適正化のため、同年九月二七日付で訴外組合に対し、同組合が貸出しおよび手形割引を行なった場合はそのつど金額、住所、氏名、期限、担保について翌日都知事に報告するよう日報の提出を指示し、貸付業務を監視する体制をとるようになった。

(五) 昭和三四年三月九日を基準日とする監査結果では、

1  訴外組合の貸付金総額は二億七六一〇万三四七四円であり、そのうち回収不能として欠損金とみなされるものは一億五五五八万三四一四円で貸付金総額の五六・三%にあたり、右欠損金中には宏和信用組合当時のものも相当額含まれているが、これを除外しても訴外組合の貸付業務の内容は悪いこと、右の他に欠損金として、仮払金勘定のうち回収不能なものが一八五万円、動産、不動産の未償却分が一〇四万一二二六円、前期繰越損金が三四四六万三九五六円、前期末貸付利息の粉飾のための看做金が五八三万〇九〇二円あり、これら欠損金を合計すると一億九八七六万九四九八円に達し、これを補填する組合資本である出資金は二七七四万五七〇〇円のみであり、訴外組合の運営には困難が予想されること、また、右基準日現在において、期中損として三一〇〇万円が存する他、期末決算には三五〇〇万円の赤字が予想され、前記貸付利息の粉飾のための看做金を含めた繰越欠損金四〇二九万四八五八円に右赤字が累積すると七五〇〇万円以上の営業損失となることが予想され、訴外組合は経費倒れに終る危険があること、右のような収支状態の悪化は貸付金利息等の収入が少いためであり、特に伴道義に対する貸付金八〇四一万一七二〇円の貸付利息が入らないことにあることなどが判明したため、都知事は伴道義に対する元利金の回収が確保されるならば訴外組合の業務を存続させて行くことも可能であるとの見通しを建て、右返済計画ならびに組合の財産および経営を正常化させるための具体的方策について訴外組合の回答を求めた。

2  右基準日現在の日計表の現金勘定には三六三五万三一六三円が計上されているが、このうち二三三六万八〇四一円は看做金であって、真に現金とみなされるものは一二九八万五一二二円だけであり、右看做金のうち一〇六五万八五〇〇円は伴道義が個人的に一時借受けたものであることが判明したので、その返済方が要求され、更に前年度末の決算において貸付利息の収入を粉飾するため仮出金とした看做金五八三万〇九〇二円を期末決算時に繰越欠損金へ、職員に支給した夏期および歳末の手当合計一五八万一五〇〇円を人件費へそれぞれ振り替えること、支店の預け金勘定のうち平和相互銀行神田支店宛当座貯金七五五万二九三〇円は普通預金と二重記載の関係にあり、一方は架空のものであるから、これを至急取消すこと、その他本店の経理が極めて杜撰であるため、その改善を行なうよう行政指導がなされた。

3  更に看做金のうち約一二〇〇万円は組合長伴道義が株式会社鬼怒川温泉ゴルフ倶楽部名義で借出していることが判明したため、都知事は昭和三四年七月二七日訴外組合の理事長伴道義および同常務理事新木英治の連名をもって、これを同年九月三〇日までに返済するようにすること、右支払を担保とするため右会社のゴルフ場敷地に抵当権を設定するのに必要な書類を差入れることとする誓約をなさしめた。

しかし、右貸付金とされた看做金は右誓約にもかかわらず期限までに返済されなかったので、都知事は右返済方を要求するうち、返済されたとの報告を受けたので、これを確認するため係官を訴外組合に派遣して調査にあたらせたところ、帳簿には返済された旨の記載がなされているが、帳簿と現金在高とが一致しないばかりか、現金勘定が一億円以上も不足することが判明し、その行方を追求した結果、これが株式会社鬼怒川温泉ゴルフ倶楽部に貸出されていることが明らかとなったため、都知事は昭和三四年一二月二四日訴外組合の株式会社鬼怒川温泉ゴルフ倶楽部に対する貸付金一億二七二五万二〇六二円について、これを担保させるため、右会社の所有するゴルフ場敷地である左記土地につき順位第一番の抵当権設定契約を公正証書をもって締結させ、右返済をうけるよう行政指導を行なってきた。

栃木県塩谷郡藤原町大字高徳六二番

一  山林 五反二畝二三歩

同所   六三番

一  山林 一反七畝二〇歩

同所   六四番

一  山林 六反二畝一歩

同所   六五番

一  山林 四反三畝二一歩

同所   六六番

一  山林 三反二畝二四歩

同所   六七番

一  山林 一反六畝五歩

同所   六八番

一  山林 四反九畝一歩

同所   六九番

一  山林 九反六畝九歩

同所   一四八番

一  原野 二五反四畝一八歩

同所   一五三番

一  原野 八反一二歩

同所   二七八番

一  原野 一五反三畝二〇歩

栃木県今市市字躑躅ヶ入一一九〇番の三〇

一  原野 一一反三畝一五歩

栃木県今市市大桑町籠岩一二二三番

一  山林 三〇反九畝一歩

同所   一二二四番

一  山林 七反三畝一五歩

同所   一二二六番

一  原野 五七反二畝二五歩

(六) 昭和三五年一一月三〇日を基準日とする監査結果では、

1  右基準日における欠損金として、前期繰越欠損金約七二三六万二〇〇〇円、分類資産欠損見込額約一億二二〇二万二〇〇〇円、当期中損失金約一三一七万七〇〇〇円の合計二億〇七五六万一〇〇〇円が見込まれること、右欠損金額が増大した理由は貸付金中に宏和信用組合当時の焦げ付債権が多額に含まれているというだけでなく、東京昼夜信用組合と名称が変更された後の貸付業務が不堅実、無計画なものであったこと、人件費その他の諸経費が高額であり収支のバランスがとれていないことなどが指摘されるとともに、組合長伴道義に対し右の点を改善し、訴外組合の再建を図る具体的計画を樹立し、これを実施に移すよう指示がなされた。

2  欠損金の要因をなすものとして、組合長伴道義を通じて株式会社鬼怒川温泉ゴルフ倶楽部に貸出された一億二七二五万二〇二六円の未返済金九一六九万七七二六円が回収困難が予想される分類Ⅱにあたり、伴道義への貸付金元利七四一〇万七四六〇円の返済が実行されていないことが判明したため、都知事は、訴外組合の窮状を脱するためには、右のように大口の貸付金を固定せず、前記(四)の3、(五)の3の右各貸付金に対する担保物件を処分して換金し、これを確実な貸付金に替えることが必要であるとしてその旨訴外組合に指示した。

3  その他前記(四)の3のとおり訴外組合へ所有権移転登記した同組合の本件営業所の土地、建物の評価を行ない、これを不動産勘定に計上することなどの事務処理の改善が指示された。

4  右監査結果にもとづく示達事項を受けた訴外組合昭和三六年三月一八日付および同年四月一四日付書面をもって、株式会社鬼怒川温泉ゴルフ倶楽部はゴルフ場工事の一部完成などにより業績も逐次向上し、右会社に対する貸付金の回収は確実なものとなってきたこと、伴道義個人に対する貸付金七四一〇万七四六〇円については株式会社鬼怒川温泉ゴルフ倶楽部に債務の引受を行なわせ、右会社の業績に応じてその回収を図ること、右貸付金の回収をすすめる他、業務の合理化、事務の簡素化により人件費、物件費の低下を図るなどして収支の均衡、資産の充実に努めること、伴道義に対する貸付金の担保として訴外組合へ所有権移転登記をなした本店営業所の土地、建物は無償で組合資産に組み入れ、繰越欠損金の補填に充てることなどを回答した。

5  右回答をえた東京都知事および同知事の命をうけて信用組合の監督事務を行なっている同都経済局金融貿易部信用組合課は、右回答のとおり実行されるならば訴外組合の再建は可能であるとの判断を下し、随時訴外組合の役員を招致して、右回答事項を実施し、同組合の再建に努めるよう督励してきた。

(七) しかし、東京都の行政指導にもかかわらず、訴外組合の業務内容は一向に改善されず、昭和三八年一月二八日から開始された訴外組合に対する検査では、それまで東京都知事の監査の目を免れてきた簿外経理が発見され、訴外組合はぼう大な簿外預金、多額な簿外貸出を行ない、かつ、欠損金が約一五億九〇〇〇万円にも及ぶこと、支払準備資金にもことかく状態であることが判明したため、東京都知事は同年一月三〇日訴外組合に対し業務停止命令を発するに至った。

以上の事実を認めることができ(る。)≪証拠判断省略≫

右事実によれば、東京都知事は、昭和二九年二月二七日を基準日とする監査以後昭和三八年一月三〇日業務停止命令を発するまでの間、年々欠損金が累増する傾向にあった訴外組合に対し、経営の合理化、経常収支の均衡、自己資本の充実、資産内容の健全化、資産の流動性の向上、大口信用供与の是正、法令違反行為の除去に努め、訴外組合の経営基盤を強化するよう行政指導を行ない、かつ、行政指導により業績不振にあえぐ訴外組合を立ち直らせようという方針にもとづき監査および業務内容改善の勧告などを行なってきたのみで、原告ら主張の時点までに同主張にかかる処分を行なわなかったことが認められるが、右のような処分を行なわず行政指導により訴外組合の再建を図らせようとして前記認定のような勧告を行なってきた都知事の措置が著しく合理性を欠くものであったとはにわかに断定し難く、また都知事が故意、過失により、合理的な裁量にもとづかずして訴外組合に対する業務停止命令を遷延させてきたものと認めるに足りる証拠は存しない。

四  よって、原告らの本訴請求はその余の点について判断をするまでもなく、理由がないこと明らかであるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村岡二郎 裁判官 白石嘉孝 玉田勝也)

〈以下省略〉

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